以前の私は、鏡を見るたびに、肌の乾きや髪のまとまりにくさが気になっていました。朝の支度中に思うようにメイクがのらないと、それだけで気分が沈む。新しいものを足せば何とかなるのではないかと、化粧品や手入れの方法をあれこれ探したこともあります。
でも、50代になってからは、足すことよりも、毎日触れるものを少しやさしく選ぶほうが私には合っていると感じるようになりました。肌の調子も髪の状態も日によって違うから、以前と同じように整えようとして急がない。今の自分を見て、手をかけるところを一つ選ぶようにしています。
ある朝、鏡の前で手を止める
ある朝、いつものように急いで支度をしていると、頬のあたりが乾いて見え、髪も思うようにまとまりませんでした。以前なら「今日はだめだ」と思って、あれこれ重ねたり、何度も髪をとかし直したりしていたと思います。
その日は、いったん手を止めました。洗面台の前で深呼吸して、いつも使っている保湿アイテムを手のひらで温め、髪は無理に引っぱらずにゆっくりとかす。メイクも、隠したいところを増やすより、肌になじむ色を少しだけ選びました。
劇的に何かが変わったわけではありません。でも、鏡の中の自分を急いで直そうとしなかったことで、出かける前の気持ちが少し落ち着きました。それからは、見た目を完璧に整えるより、朝の自分を急いで扱わないことを大事にしています。

以前の自分に戻そうとするより、今日の自分に合う手入れを選ぶほうが気持ちがラクになりました。
肌に触れる時間をやさしくする
肌が乾いて見えるとき、以前は保湿アイテムを重ねることばかり考えていました。今は、洗顔のあとやお風呂あがりに、タオルでこすらずに水気をそっと押さえることから始めています。そのあと、普段使っている化粧水やオイルを、手のひらでなじませながら使います。
毎回同じ手順にしなくても、乾きを感じる日は少し丁寧に、何も気にならない日はいつもどおりに。お風呂あがりに、髪を乾かす前の少し落ち着いた時間に肌の手入れをすると、寝る前の慌ただしさが減るように感じます。
肌に何を使うかも大切ですが、急いで終わらせない数分が、私には心地よい時間になりました。
髪をゆっくりとかして夜の準備をする
髪については、朝のうねりや広がりが気になり、何度もブラシを通していた時期がありました。急いでいるときほど力が入り、余計に扱いにくく感じていたように思います。
今は、朝も夜も、毛先から少しずつとかすようにしています。夜はお風呂のあと、タオルで水気を取ってから、使い慣れたヘアオイルを少量なじませて乾かします。つける量や仕上がりに正解を決めず、その日の髪に合わせて控えめにする日もあります。
ある夜、ドライヤーを終えたあとにゆっくりブラシを通したら、一日の終わりに気持ちまでほどけるように感じました。翌朝の髪を整える時間も、以前ほど慌てなくなりました。
心が落ち着くメイクを選ぶ
以前は、年齢に合うメイクを探さなければと思っていました。雑誌や動画を見ると、試してみたいものが増えて、かえって鏡の前で迷うこともありました。
今は、使うと気持ちが落ち着く色を中心にしています。薄づきのベースに、顔色になじむリップを一本。時間がない朝は、それだけで終えることもあります。しっかり仕上げる日もありますが、「今日はこれで出かけたい」と思えるかを目安にするようになりました。
メイクは、誰かと比べるためのものではなく、外へ出る前に自分の気持ちを整える小さな準備。そう思えるようになってから、鏡を見る時間が少しやわらかくなりました。

「似合うかどうか」だけでなく、自分が落ち着いていられるかも大切にしています。
肌ざわりのよい服を選ぶ
肌や髪の手入れをしても、首元がチクチクする服や締めつけを感じるインナーを着ると、外出先でも気になってしまいます。以前はデザインを優先して、帰宅するまで我慢することもありました。
今は、着たときに肩や首元が楽か、素材が肌に触れて気にならないかを確かめてから選びます。コットンやリネンの服、締めつけが強すぎないインナーなど、手持ちの中で心地よいものに自然と手が伸びるようになりました。
ある日、家で過ごす服を一枚替えただけで、夕方まで体がこわばりにくいと感じたことがありました。新しく何かをそろえなくても、今ある服の中で自分に合う一枚を選ぶ。その小さなことも、私をいたわる手入れの一つになっています。
今の自分に合うものを選ぶ
肌も髪も服も、以前の自分と同じである必要はないのだと思うようになりました。乾きを感じる日、髪がまとまりにくい日、メイクをしたくない日もあります。それぞれの日に、少しやさしい触れ方や選び方をしてみる。
以前は変化を気にしてばかりいましたが、今は自分の調子を知るきっかけとして受け止めることが増えました。手入れは、見た目を整えるためだけではなく、今日の自分を急がせない時間でもあるのかもしれません。
これからも、気になるところを責めるのではなく、今の私が心地よく過ごせるものを選びながら、肌と髪に向き合っていきたいと思います。
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